この2月7日「鈍感力」(集英社1100円)を刊行しました。
これはもちろん、小説ではなくエッセイです。
いきなり、鈍感力など、奇妙なタイトルだと思われる方も多いかと思います。しかしこれはかねがね思っていたことで、鈍感なのは生きていくうえで、強い力になる、ということです。
たとえば会社で上司から叱られたり、なにかいやなことがあってもすぐ忘れて、前向きにすすんでいける人、肉体的にも、よく眠れて、目覚めもよく、なんでも好き嫌いなく食べて消化できる。こういう力こそ、本来の才能を育み、大きく花開かせる原動力になるのです。
この鈍感力の最たるものは母親の子供への愛です。たとえウンチでも、子供のものなら色を見て匂いを嗅いで、さらに汚したご飯もつまんで食べることができます。たとえ子供が罪を犯しても、母親だけは許します。この大きな愛こそ、鈍感力以外のなにものでもありません。
また、男と女の愛も見方を変えたら鈍感力で、愛する人のことなら、かなりのことでも許せます。
これまで鈍感というと、なにか悪いマイナスイメージのものと思われがちでしたが、そんなことはありません。ひりひりと傷つき易い、鋭く敏感なものより、たいていのことではへこたれない、鈍く逞しいものこそ、現代を生き抜く力であり、知恵でもあるのです。
この本を読まれて、自分にはどの程度の鈍感力があるのか、そしてどのように考えれば前向きに生きていけるのか。参考にしてもらえれば幸いです。
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北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、母校の整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年「光と影」で直木賞を受賞。 1980年に吉川英治文学賞を、2003年には菊池寛賞などを受賞する。