私は、作家の中でも特に手直しの多い作家と言われているらしい。
実際、ある編集者から「気合の入った校正、ありがとうございました。」と皮肉を言われたこともある。
いずれにせよ、最初の原稿がより完成されたものであれば、校正はあまり必要ないのだけれども、アイディアが決まるとそのまま一気に書き出すので、完全な文章にならないのである。
始めから熟考したうえで文章を書き出す人もいるし、私のように思い出したら一気に、ともかく書いて、それを何度も推敲する作家もいる。
どちらがいいかはともかく、私は後者のやり方で40年もやってきたので、今更かえられないのである。
今の新聞連載小説も一回分を、最低4、5回は書き直す。
おかげで、事務所のデスクはおおわらわ。
特に、愛ルケは今月で終わる予定で、今、最後の原稿にさしかかっているため、さらに、書き直しが多く、デスクは悲鳴をあげている。 ごめんなさい!!
明けまして、おめでとうございます。
本年もよろしく、といっても、なにがおめでたくて、なにがよろしくか、よくわからないけど。
ところで、五日は恒例の、渋谷の事務所開き。今年も編集者諸氏が三十名近く集まってかなり賑やか。
新年会の宴もたけなわ、というより終わりに近づいてふと見渡すと、男性と女性の数がほぼ同じくらい。
そこで、王様ゲームをしよう、というこになる。
この遊び、新橋のお座敷などで、芸者さんを交えてやる一種のゲームだが、まず男と女が交互に座る。もし、男が多すぎたら、男同士隣合わせで座ってもかまわないけれど。
そこで、全員の数だけ割箸を用意して、その端に、1・2・3・4・・・とナンバーをつけていく。そして一本だけに赤字で、「王様」と記しておく。
新年会のときは、たしか二十本くらいだったが。
そこで、箸を全員に配って、まず、「王様だあれ」といい合い、王様を引いた人が手を挙げる。
この王様は名のとおり、絶対の権力を持っているから、好き勝手なことを要求できる。
たとえば、「二番と五番と、正面から強く抱き合え」とか、「三番と十二番と、キスをしろ」とか。
命令されたら、それだけは勘弁して、といっても駄目。いわれたとおり、絶対にやらねばならない。
これが男同士とか、嫌いな相手と当たったら悲劇。
ところで小生は、文春のY君の口に含んだジュースを、口移しに飲まされる役。
仕方がない、酔った勢いで飲んだけど、Y君がなにか病気をもっていたら、そろそろ今夜あたりから発病するかも…
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、母校の整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年「光と影」で直木賞を受賞。 1980年に吉川英治文学賞を、2003年には菊池寛賞などを受賞する。