晩秋の川奈に行って、ゴルフを楽しむ。
川奈ホテルの部屋の窓から見下ろす風景は、十一月の末だというのに、青い海を前に明るく穏やか。
広い庭とプールの先の樹々の茂みが、茶褐色に色づいているが、そのなかに一本だけ白く小さな花を咲かせた樹がある。
名前をきくと桜で、十月桜という種類だとか。
このあと、一月末から緋寒桜が咲きはじめ、四月の八重桜まで、桜が絶えることはないとか。
さすが、暖流に洗われる南伊豆、と感嘆するが、こんなに桜が咲き続けてもいいのだろうか。
桜は年に一度、数日、満開の美しさを見せて儚く散るから、一層美しく愛惜もつのるというものだけど。
あたたかすぎる川奈に、ちょっと意地悪をいってみたくなる。

photo by Junichi Watanabe
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、母校の整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年「光と影」で直木賞を受賞。 1980年に吉川英治文学賞を、2003年には菊池寛賞などを受賞する。